Build New Local Google News Initiative

「Build New Local 2022 with Google News Initiative」結果報告(前編)

Build New Local実行委員会
2022年12月12日 17時37分

12月8日(木)ビジネスプランコンテスト発表会を開催。全国の地方新聞社48社から生まれた9案の新規事業プランが採用され、Google News Initiativeのサポートの下、“持続可能”な新規ビジネスの実装へ。

 Build New Local実行委員会(デジタルビジネスコンソーシアム(以下DBC):加盟地方新聞社45社、地域新聞マルチメディアネットワーク協議会(以下MMN):加盟地方新聞社43社、特別協力:Google News Initiative(以下GNI))は、全国の地方紙を対象に、地域社会(New Local)に根ざした新規事業のビジネスプランを発表する「ビジネスプランコンテスト発表会」を12月8日(木)に開催いたしました。本コンテスト内で表彰された地方新聞社9社に対し、今後実装化に向けた支援を行ってまいります。
 「Build New Local プロジェクト」とは、全国の地方新聞社がGNIの協力の下、「情報」を含む様々なインフラのデジタル変革により、アフターコロナ時代における地方の人々がより豊かで幸せに暮らせる地域社会(New Local)の構築を目指すことを目的に、2021年から展開しているプロジェクトです。2回目の取り組みとなる今年は、さらに進んで最終的な実装化までを前提にした新規事業実装支援とするべく、実践的なプログラムを進めてまいりました。

 ビジネスプランコンテストでは、「Build New Localを実現し、地方新聞社による地域社会の未来を築く、デジタルを活用した新規事業案」を地方新聞社より募集。応募総数21社24案の中から、1次・最終審査を事前に行い、デーリー東北新聞社・岩手日報社・静岡新聞社・信濃毎日新聞社・中日新聞社・中国新聞社・山陰中央新報社・西日本新聞社・紀伊民報の計9社9案の実装支援を決定いたしました。実装化支援が決定した全9案のビジネスプランを当日発表し、今後GNIと中長期的なパートナーシップを結びながら実装化を図っていきます。

 本プロジェクトは来年度も継続して開催し、地方紙業界のDXを通じて、産官民学の垣根を超えた新たな地域社会(New Local)の構築、並びに、地方新聞社の持続可能な成長に向けたビジネス基盤の構築を目指して参ります。

1.ビジネスプランコンテスト概要

 本コンテストでは、下記6つの審査基準に則って1次・最終審査を事前に実施し、9社9案の実装化支援が決定いたしました。
 本コンテストの審査基準、選考プロセス、審査に関わった審査員は以下の通り。

<審査基準>
①    地域課題の解決に繋がるか
②    リアルな顧客課題に立脚しているか
③    デジタルを活用しつつ、顧客に提供する価値の本質を捉えたサービスを設計できているか
④    サービス構築のフィジビリティが担保できているか
⑤    マネタイズ方法に妥当性があり、収益計画に蓋然性があるか
⑥    PoC実施計画やその後の事業化推進の体制やスケジュール等、ローンチまでの計画が具体的であるか

<選考プロセス>
■1次審査
エントリーされたビジネスプランの中から、最終審査に進む20案を選出。
審査員:BNL実行委員会事務局・Google

■最終審査
1次審査を通過した20案から実装を支援する最大10案を選出。
審査員:BNL参加地方新聞社・BNL実行委員会事務局・Google

2.実装化ビジネスプランと今後の動き

 選ばれた9案の概要と新聞社は以下の通り。

デーリー東北新聞社「災害に備える備蓄食の定額配送サービス」

<アイディア概要>
近年、地震や大雨などの自然災害が全国各地で多発しています。発生直後は各家庭でも一時的に防災に対する意識が高まり、非常食や防災グッズを買いそろえますが、平時が続くことで、非常食が賞味期限切れになってしまうことも。そこで、弊社が考えたのが「災害に備える備蓄食の定期配送サービス」です。3カ月ごとに非常食にもなる備蓄食をお届けすることで、各家庭でのローリングストックの実践をサポートします。地元スーパーからの協力を得ることで、バラエティーに富んだ備蓄食を用意できることが強みです。備蓄食のアレンジレシピや、防災グッズの活用法などを閲覧できる専用サイトも構築します。

<受賞新聞社からのコメント>
 地域と共に歩んできた地方の新聞社として、地域課題を解決するために何ができるか。社内で率直に意見を交わし、防災に関する課題を一つでも解決したいと考えました。このサービスを通して、家庭での非常時への備えをサポートするとともに、地域の皆さんが漠然と抱える「防災に関しての不安」を軽減することを目指していきたいです。また、地方紙が手掛けるビジネスのロールモデルの一つとなるよう、安定した運営でサービスを継続していきたいです。

岩手日報社「Google マップでDX、新聞販売店の地域活動とビジネスを10年飛躍」

<アイディア概要>
 「地域の高齢化・孤独化」「地域を見守り続けている新聞販売店のネットワークの維持」「新聞販売店のDX化が進んでいない」という地域課題を解決すべく、Google マップを活用したアプリを開発。地域の見守り機能として見守りサービス、買い物代行などの一連作業をGoogle マップ連動アプリに集約します。また、新聞販売店の配達・営業を強化する機能も搭載します。

<受賞新聞社からのコメント>
 地方紙がこれからの時代、どのように地域貢献していけるかを考える良いきっかけになりました。社内の部署を超えて、そして新聞販売店と連携して立ち上げたビジネスプロジェクトが評価されて非常にうれしく思います。このプロジェクトを早期に実現して、地域課題解決に向けて先進的に取り組んでいきたいです。

静岡新聞社「性差によって生じる働くハンデ、特に生理の悩みを軽減させるサービス『つきのかたち』」

<アイディア概要>
 性差によって生じる働くハンデ(特に女性の「生理」に対する悩み)を軽減させるために福利厚生サービス「つきのかたち」を開発。静岡県内の企業に対して、販売し、アプリを導入させます。機能は主に5つ。

①「理解」
⇒manabi/生理を始め性教育に関するコンテンツの配信。
②「共有」
⇒moonthly/シフト管理や月経周期の登録。体調に合わせた働き方の共有が可能。
 ⇒moonlight/夜のシフト管理など、イレギュラーな働き方を管理する機能。
③「対応」
⇒OiTr/ナプキン提供サービスの「オイテル」を使用できる機能。
 ⇒help me!/生理による体調不良や子育てなど、勤務時間変更や休暇を申請できる機能。
       メンターに発信され、当日仕事を代わってくれる人を探すことが可能。

<受賞新聞社からのコメント>
 新型コロナによって働き方の多様化が広がる中、働く人を支援するサービスが新規事業として評価されたことをうれしく感じます。「つきのかたち」は、私たちが仕事をする中で感じる「働きづらさ」から生まれました。男女混合チームですが、それぞれがサービス利用者の背景や立場を想像し、ヒアリングを重ね、メンバー各々が持つ力を発揮した結果が実を結んだことが非常にうれしいです。今後はプランをさらにブラッシュアップし、性別やライフスタイルに関係なく、多様な働き方を支えるサービスに育てていきたいと考えています。

信濃毎日新聞社「実家あんしん見守りサービス」

<アイディア概要>
 遠方に空き家となってしまった実家を持つ人、実家に一人暮らしの高齢の親が住んでいる人にとって、実家を管理・維持していくのは、精神的、肉体的、資金的に負担となっています。実家を売却する、いつか居住するなど「実家の将来」が決まるまでの管理を、「つなぎ役」として新聞社が代行することで、そうした負担を軽減することが目的です。具体的には、定額で屋外から建物を点検し報告。または鍵を預かり屋内に入り、簡単な清掃や通風なども行うプランも。依頼主への報告は、画像、動画、またはビデオ通話ができるデジタルサービス等を活用する予定です。

<受賞新聞社からのコメント>
 地域の課題を考える際、自分たちは何が一番困っているのか?と意見を出し合いました。その中で共通していたのが「将来自分の実家はどうするのだろう?」ということでした。とても大事なテーマなのに、その話題に触れたくない、その時になったらでいいや、など私たちは目をつぶってきています。この集合体が地域の課題となり多くの空き家を発生させてしまっているのではないかと気づきました。このプランを実装することで、一人でも多くの方の実家について心のトゲを抜くことができればと考えております。

中日新聞社「中部留学生PRプロジェクト~多言語対応PR動画制作~」

<アイディア概要>
 大学で学ぶ留学生と共に「PR動画を制作し外販する」ビジネス。日本の観光資源や製品、サービスなどの情報を〈世界へ発信するリクエスト〉に応えます。留学生が動画で話す言語は日本語とし、キャプションに様々な外国語を入れることで多言語対応します。地方新聞社と地域の大学は様々な面で結びつきが強く、この関係を基礎として留学生人材のプラットフォームを構築。留学生には、演者の役割にとどまらず、台本づくりからクライアントへのレポート報告まで全ての作業に関わってもらいます。そのことで作り手の“熱量”は上がると考えました。世界の情報発信トレンドをキャッチアップしながら、時代に即応したPR手法をアップロードしていきます。

<受賞新聞社からのコメント>
 コロナ禍を契機に、世界の国々や人々はむしろ互いの距離感を“縮めた”と考えています。アプリがコンテンツ市場を通じて世界同時リリースされ、EC市場でも個人が世界中から直接モノを買っています。だからこそ世界に目を向けました。新聞社の「情報を取り扱う力」と「地域のコーディネート力」をベースに、情報の発信手法(→動画)とマーケット(→世界)を変えることで、新しいマネタイズ機会を創出できるはずです。

中国新聞社「よろずやIppin帖(デジタルデバイドの壁を越えて)」

<アイディア概要>
 生産規模が小さく広告宣伝、販路開拓、物流に課題を抱える地元生産者に対して物流から販売、集金までを一括で行うサービスを提供します。新聞社が持つ販売所への物流を軸に、販売所単位で商品販売を行うシステム(新聞社から斡旋される商材だけではなく、販売所独自で商材を取り扱うことが出来る)を構築。商材の内容や数に応じて、販売を行う販売所の数を調整。生産者は、指定された場所に一括納入するだけで入金され、生産活動に専念することができます。将来的には小規模小売店と地元生産者をつなぐBtoB事業へと発展させていきます。

<受賞新聞社からのコメント>
 2021年から購読者向けに始めた物販事業を通して、県内にはまだまだ認知されていない逸品が数多く埋もれていることを痛感しました。事業規模が小さく、販路開拓や物流など本業以外に手を取られている事業者に「Ippin帖」のシステムを提供することで、地域経済の活性化に取り組んでいきます。

山陰中央新報社「誰もが好きな場所で安心して暮らせ、地域が元気になるサービスwithTouchCare」

<アイディア概要>
 急増する独居高齢者を置き去りにしないために、地域情報、デジタルと介護事業、の知見を活かし、高齢者が日常的に外部と繋がり、安心で健康的な生活を送れるように、ITツール、地域メディア、介護事業者、地元組織が一丸となって取り組みます。センサータグを独居者の体が触れる部分に貼付し、行動をセンサーで把握。スマートフォンアプリからBluetoothを介してデータベースに情報を蓄積します。薬の飲み忘れ、散歩の勧めなどの行動等を促したり、家族に情報を共有したりします。利用者のコミュニティサイトでは地域情報(行政情報、イベント情報)の受信などを行います。また、家族も安心できる情報(防災、法務、介護・医療)をプロの視点から提供します。

<受賞新聞社からのコメント>
 超高齢化社会で、介護する側、される側、お互いが負担が少なく暮らせるような社会を実現したいと思いました。デジタル化が進む中、高齢者が取り残される可能性もあります。日頃からデジタルデバイスに触れることでリテラシーの向上にもつながればと思います。

西日本新聞社「ジビエと共に生きる-Build New Table-」

<アイディア概要>
 鳥獣被害額全国ワースト2位の福岡県。猟師の担い手減少など、課題は山積みです。
地元メディアとして、現状を伝えながら課題解決を図りたいという想いから“ジビエ”に着目しました。農作物などに被害を与える鹿や猪などを食肉として活用する“ジビエ”ですが、まだまだ浸透しておらず、ネガティブイメージも付き纏っています。そこで、美味しいジビエを提供したいと努力している地元企業と連携し、新聞社リソースを駆使したPRを行い、環境にも配慮しながら気軽に、美味しくジビエを食卓へお届けしたいと考えます。新しい食卓の在り方を提案したいと思い、タイトルも-Build New Table-といたしました。

<受賞新聞社からのコメント>
 部署の垣根を越えてアイデアを出し合ったり、試行錯誤を繰り返した結果が実を結んだ結果受賞ができ、良かったと思います。鳥獣被害に苦しんでいる地域は沢山あると思います。自然との共存を図る事を目的に、楽しみながら、地域課題の解決に今後取り組んでいきたいと思います。

紀伊民報「和歌山スタディ・ワーケーション~農業改革・関係人口とイノベーションの創出~」

<アイディア概要>
 仕事の環境を変えることで創造力を養ったり課題解決につなげたりする「ワーケーション」と、その学生版である「スタディケーション」の情報を発信するポータルサイトを構築します。ポータルサイトを起点とし、ワーケーションのコーディネーターである南紀白浜エアポート社、地域の農業を支えるJA紀南などと協働して受け入れプランを立案し、和歌山県の関係人口増加に寄与するとともに、地域の課題解決につなげるマッチングビジネスを展開します。

<受賞新聞社からのコメント>
 昨年に続いて、2年連続で弊社のビジネスプランを評価していただき大変うれしく思います。今年は、スタディケーション・ワーケーションへの取り組みを提案。当面は農業の人手不足に焦点を絞り、都市と地方の人材交流を目指し、地元の受け入れ企業や農業関係者、大学、宿泊施設、コーディネーターなどさまざまな方たちと協働し実装に取り組みます。今回は、地域情報を核としたビジネスプラン、前回受賞したプランは、教育分野で新聞記事を活用する内容で、若者を読者につなげるビジネスプランでした。デジタル時代において、どちらも新聞社にとって重要な事業ですので、バランスを考えながら平行して取り組んでいきたいと考えています。
選出された9案のビジネスプランは、実装化に向けて各社とビジネス実装に向けた調整会議を行い、開発資金の提供、開発サポートを順次進めてまいります。