Build New Local Google News Initiative

留学生とつくる動画で、世界へ情報発信

中日新聞
2024年04月10日 15時59分

中日新聞社が実装を目指す『中部留学生PRプロジェクト~多言語対応PR動画制作~』は、留学生と共に制作した「多言語動画(外国語字幕)」で、日本のモノやコトの情報を世界に発信する事業です。

PR 動画に留学生を起用する「 4 つの理由」

実証実験の動画制作に参加した学生たち

実証実験の動画制作に参加した学生たち

 当初より「インバウンド推進」を目的とした情報発信に適した事業だと考えていましたので、自治体の観光担当部や観光協会、交通機関などを中心に事業案への評価を聞くヒアリング活動を進めました。
ヒアリングの中では、類似した PR 手法として、インフルエンサーを使った動画制作や情報発信を行う例が多いことを知り、また、これへの評価が高く期待も大きいことを確認しています。
留学生を起用した当事業案への期待値は、全体的に大きくありませんでした。(タレントではない)一般の外国人である留学生は“アマチュア”だということが一番の理由です。

 一方、同時期に実施した、地元の 5 つの大学へのヒアリングにおいては、当事業案に大きな期待が寄せられ、否定的な声は全くありませんでした。自校の留学生が学外の企業活動などに参加することを教育機会やキャリア支援として捉える考え方があるようです。


ここで、我々が“情報発信者”として「留学生」を重用する 4 つの理由を示します。

① 実際にその地域で生活する外国人であり、地域とは無縁の外国人タレントやインフルエンサーなどが持ちえない、真の〈地域愛〉と〈説得力〉を持っている。

② その地域に住む日本人からの応援が得られやすく、〈多文化共生〉〈産学連携〉の面からは〈ニュースバリュー〉を持ち、彼らの活躍は報道の対象にもなりやすい。

③ 所属する大学をはじめ、学友、在日同胞ネットワーク、駐日外国公館、地域行政などを介した〈情報拡散〉が期待できる。

④ 毎年あらたな留学生が来日してくるため、〈その時々の世界の若者〉と取り組む事業に成り得る。留学生たちから世界の情報発信トレンドをキャッチアップし、その知見を絶えずアップデートし続けられる。

当事業がクライアントに提供する「 2 つの価値」

 この事業がクライアントに提供する価値は 2 つあります。 1 つ目は当然ながら、 PR 事象の「情報発信」です。もうひとつは「留学生との関係構築」で、ここに当事業の大きな特徴があります。
動画制作を行う中で、 PR 事象について知識や関心を持った留学生と深い関係性を築いてもらいます。動画制作を終えた後も、継続的に情報交換を行うような“両者の関係性”が続く可能性はありますし、大学卒業後にスタートする学生たちのキャリアと、その PR 事象が結びつくこともあるでしょう。
学生(左端:イタリア人、右から 2 人目:ベルギー人、中央:日本人)と岡崎市の職員(右端/左から 2 人目)は、岡崎市のロケを通じてとても親しくなった。 SNS などでつながり、その関係性が継続することを期待したい。

学生(左端:イタリア人、右から 2 人目:ベルギー人、中央:日本人)と岡崎市の職員(右端/左から 2 人目)は、岡崎市のロケを通じてとても親しくなった。 SNS などでつながり、その関係性が継続することを期待したい。

 以上の仮説、各方面へのヒアリングで確認した課題などを踏まえた上で、新規事業案をまとめ、Build New Local 2022 ビジネスプランコンテストにエントリーしました。結果、実装支援事業として選出されています。
コンテスト後には、想定通りに動画制作と配信ができるのかを確認するため、また、正式に事業をスタートした際の見本動画を準備するため、 1 年( 2022 . 12 ~ 2023 . 12 )をかけ実証実験を行いました。
この内容を以下に報告し、実装本番へ歩を進めていきたいと思います。

フェーズ 1 「取材会議(事前学習)」/フェーズ 2 「ロケ(出演)」

 当事業の進行は 4 つのフェーズ(段階)に分かれています。実証実験でもこの 4 つのフェーズを意識しながら実作業に取り組み、仮説の検証と課題の洗い出しを行いました。

フェーズ 1 「取材会議(事前学習)」
 大学の協力によりに能力と意欲のある学生が選抜されましたが、彼らにはより強いイニシアティブを持って事業(実証実験)に参加してもらえるよう、事前学習の場を設けています。コンテスト前のヒアリングで聞かれた「留学生はアマチュア」との指摘、課題への対策でもあります。
事業に参加する名古屋外国語大学と名城大学の学生(各校=留学生 2 名+留学経験のある日本人学生 1 名)が中日新聞に集まり、キックオフミーティングと称して取材会議(事前学習)を行いました。 
当事業パートナー企業である共同通信デジタルが展開するオンラインメディア『 City-Cost 』(https://www.city-cost.com/)の編集長である Thomas Shuttleworth さんが、インバウンド向け動画制作のポイントについて講義を行いました。

当事業パートナー企業である共同通信デジタルが展開するオンラインメディア『 City-Cost 』(https://www.city-cost.com/)の編集長である Thomas Shuttleworth さんが、インバウンド向け動画制作のポイントについて講義を行いました。

もう 1 社のパートナー企業である、テレビ愛知/ TVA advance によるレクチャーの様子。ロケーションハンティング、ロケ(撮影)の実施方法や要点などについて、テレビ番組を制作するプロデューサーやディレクターが説明。台本案の配布も行いました。

もう 1 社のパートナー企業である、テレビ愛知/ TVA advance によるレクチャーの様子。ロケーションハンティング、ロケ(撮影)の実施方法や要点などについて、テレビ番組を制作するプロデューサーやディレクターが説明。台本案の配布も行いました。

キックオフイベントの様子(テレビ愛知 動画ニュースより) 
https://news.tv-aichi.co.jp/single.php?id=1976

フェーズ2「ロケ(出演)」
 ロケ(撮影)とは別に、学生と共にロケーションハンティングも行い、外国人ツーリストに対しての訴求ポイントがどこにあるかなどを確認しました。ロケハンを経て留学生の意見により、台本も一部書き換えています。ロケ本番はテレビ番組制作と同レベルの体制で撮影に臨みました。
「電車の旅(名古屋・岡崎・浜松)」ロケの様子

「電車の旅(名古屋・岡崎・浜松)」ロケの様子

「車の旅(知多半島)」ロケの様子

「車の旅(知多半島)」ロケの様子

フェーズ 3 「動画の配信(リーチと情報拡散)」/フェーズ 4 「クライアントへの報告(交流)」

フェーズ 3 「動画の配信(リーチと情報拡散)」
名古屋外国語大学の学生と制作に取り組んだ動画

名古屋外国語大学の学生と制作に取り組んだ動画

名城大学の学生と制作に取り組んだ動画

名城大学の学生と制作に取り組んだ動画

 「名古屋・岡崎・浜松の旅」は、英語字幕版/イタリア語字幕編版/フランス語字幕版を 8 月下旬に YouTube 上に公開。「知多半島の旅」は英語字幕版/中国語(繁体字)字幕版/ウズベク語字幕版を 2023 年 10 月上旬に同様に公開しています。いずれも、学生が各字幕の翻訳作業を行いました。

 動画公開後には、動画へ誘導する 2 種類の YouTube 広告も展開しています。
名城大学の学生と制作に取り組んだ動画
 「電車の旅(名古屋・岡崎・浜松)」では、フランス語字幕版を対象にインストリーム広告を実施。「車の旅(知多半島)」では、中国語(繁体字)字幕版を対象にディスカバリー広告を実施しています。
これを 2 種類の広告の AB テストとして捉え、達成できる再生数の違いや、再生維持率のスコアなどを確認しました。また、ターゲティング設定した属性(興味・関心)によりユーザーを分類し、視聴率の差異により「どのような属性を持ったユーザーが日本の情報を好むのか」についても検証を行っています。
正式に事業がスタートした際には、 YouTube 広告を組み込んだ商材とする予定です。
名城大学の学生と制作に取り組んだ動画
 上の図は、ウェブ広告以外で実施したり、確認できたりした情報拡散です。「留学生を起用する 4 つの理由」にある、 2 点(②③)について、おおよそ想定通りであったと考えています。

② その地域に住む日本人からの応援が得られやすく、〈多文化共生〉〈産学連携〉の面からは〈ニュースバリュー〉を持ち、彼らの活躍は報道の対象にもなりやすい。
③ 所属する大学をはじめ、学友、在日同胞ネットワーク、駐日外国公館、地域行政などを介した〈情報拡散〉が期待できる。

フェーズ 4 「クライアントへの報告(交流)」

 実証実験につきクライアントはいないため、動画「電車の旅(名古屋・岡崎・浜松)」ではロケ地となった岡崎市に対して報告会を行いました。動画「車の旅(知多半島)」においては、大学を会場にして座談会形式の報告会を開催しています。
岡崎市経済振興部観光推進課の職員に対して行った事業の報告会の様子 Google Meetを使い、岡崎市職員と学生、大学教員をオンラインでつなぎ実施しました。

岡崎市経済振興部観光推進課の職員に対して行った事業の報告会の様子 Google Meetを使い、岡崎市職員と学生、大学教員をオンラインでつなぎ実施しました。

~動画「電車の旅(名古屋・岡崎・浜松)」~
 名古屋外国語大学の学生たちからは、ロケを行った岡崎市の観光コンテンツについて、外国人視点による感想などが伝えられました。議論を通じて、同市に外国人を呼び込む様々なアイデアも生まれています。
岡崎市の職員からは「留学生の“生の声”を聞くことができてとても貴重な取り組みだった」との感想が聞かれました。
名城大学で開催した座談会形式の事業報告会

名城大学で開催した座談会形式の事業報告会

~動画「車の旅(知多半島)」~
 名城大学の 2 名の留学生、テレビ局のプロデューサーとディレクター、国土交通省中部運輸局インバウンド担当セクションの職員の参加を得て、座談会形式の報告会を実施。完成した動画が外国人にどのように見られるかなど、様々な議論を行っています。
留学生たちは、日本人だけでは気づくことができないような、外国(人)への訴求方法やインバウンドに関する貴重なヒントを数多く示してくれました。

名城大学での事業報告会の様子(テレビ愛知 動画ニュースより)
https://news.tv-aichi.co.jp/single.php?id=3680

国のインバウンド政策もにらみ、実装本番へ

 1 年をかけ実施した実証実験を終え、いよいよ実装本番の段階(プロモーション商材としての販売開始)に入ります。引き続き「インバウンド領域」での情報発信を軸として、各方面へ提案を続けていきます。

 2023 年春のコロナウイルス水際対策緩和(海外からの渡航者に課していた制限の緩和)以降、日本のインバウンド需要は V 字回復を果たし、各方面の経済活動に大きなインパクトを与えています。国土交通省観光庁の令和 6 年度予算(事業)には、ここ数年には見られなかった意欲的な政策も数多く並びました。

 下の図では、同庁発表資料にあるインバウンド政策のうち、当事業がその役割を担えると考えられるのをピックアップしました。国の補助金などの活用も検討しながら、当事業を推進していきたいと考えています。
留学生動画事業が関与できる国の施策(※)は少なくない。 ※令和 6 年度観光庁予算要求に含まれていた施策、事業からピックアップ。

留学生動画事業が関与できる国の施策(※)は少なくない。 ※令和 6 年度観光庁予算要求に含まれていた施策、事業からピックアップ。

文責:中日新聞メディアビジネス局デジタルビジネス部