Build New Local Google News Initiative

その体験は、未来につながる。

埼玉新聞社
2022年10月26日 12時00分

昨年実施したビジネスアイディアコンテストで、栄えある”最優秀賞”を獲得した埼玉新聞社。「じぶんデザイン ひと、育つ、埼玉。自ら未来を創る、心豊かな人を、埼玉から」というアイディアに込めた未来の子供たちへの想いと、専門部署を立ち上げて実装化を進めるコンテスト終了後の動きについてお話をして頂きました。

「じぶんデザイン~ひと・育つ・埼玉」プロジェクト

 「林間学校、修学旅行などは中止・延期の方向」。県内自治体の新型コロナウイルス対応に関する自社記事の数々を、一読者として何気なく目の当たりにした時に感じた強い危機感が、今回の企画立案における出発点でした。
 コロナ禍で失われた多くの「体験型学習」の機会。埼玉新聞社では、地域社会との結びつきを取り戻し、子どもたちの「自分で自分を創る力を育む場所」を立ち上げようと、始動したのが「じぶんデザイン~ひと・育つ・埼玉」プロジェクトです。
テーマは「地域の社会課題解決」。地元企業・団体と協力して、埼玉にある個々の「点」をつなぎ、地域全体の「面」で子どもたちを育む取り組みです。子どもたちが自ら考えて自分自身を創っていけるよう、日常生活や地域に関わる「一生忘れない体験の機会」を提供していきます。
 人口約730万人超の埼玉県は、都市部と農村部が混在しており、地域ごとに主力産業や伝統文化、その裏側にある社会課題などは多種多様です。埼玉の「日々」を刻み続けた地元紙だからこそ、未来を創る子どもたちに「体験」を通じて、「リアル」を伝えていくことが使命だと感じています。
 地域での学びを体験した子どもたちが将来に「夢」や「希望」を抱き、大人になった時、埼玉に誇りを持って世界中で活躍してほしいと心から願っています。

豊かな創造力とビジネスモデルの限界

 埼玉県深谷市出身の実業家・渋沢栄一翁が主人公の大河ドラマ「青天を衝け」の放送など、県内が「渋沢栄一ブーム」に沸いた2021年。埼玉新聞社は県内の学習塾とタッグを組み、約500の会社設立や社会制度の立ち上げに尽力した渋沢翁の精神にならい、これからの日本に「こんな仕組みや仕事があったらいいな」というアイデアを募集する「キッズビジネスアイデアコンテスト」を開催しました。
 小・中学生1,887人から計1,720点(個人・グループ含む)の応募があり、どのアイデアも独創的かつ創造力豊かな内容で、企画した新聞社側にも強烈なインパクトを残しました。この経験を通じて、既成概念にとらわれない子どもたちのモノの見方・考え方こそ、「地域を変えるきっかけ」になるのではと思い、今回の事業立案における大きな基礎となりました。
 同時に日々の仕事から感じていたのが、「既存ビジネスモデルの限界」です。部数減を筆頭に、新聞業界を取り巻く現状は一層厳しさを増しており、「新規購読者の獲得」「広告枠の販売」など、従来のビジネス施策は通用しなくなってきているのが現実です。今回のエントリーにあたり、自社の価値を改めて見つめ直す中で、地域の隅々まで取材活動を続ける記者から上がる唯一無二の記事こそ、埼玉新聞社にとって何よりの強みだと実感しました。
 地域の出来事や社会問題を報じた記事から体験プログラムを生み出し、そこに未来を担う子どもたちの新たな視点を掛け合わせることで、地元に新たな魅力が生まれるとともに、新聞社としてビジネスチャンスの可能性が広がると考えています。

「Build New Local準備室」の新設

埼玉新聞社「じぶんデザイン」プロジェクト プロモーション動画(30秒ver.)

 昨年末の「ビジネスアイディアコンテスト」で最優秀賞を受賞後、まず動いたのが「社内承認」と「体制構築」でした。会社の経営会議にて、本プロジェクト内容に関するプレゼン発表を、社長はじめ経営陣に向けて行い、2022年度以降の事業計画などについて議論を交わしました。また、企画提出に携わった社員を中心に、今年1月から「Build New Localプロジェクト」を発足。月2回の定例会議では、ターゲットヒアリングや類似実績の精査、アイデアの整理など「市場調査」を特に重点的に行い、自社事業のSWOT分析を深めていきながら、プロジェクトの推進に努めてきました。
 今年4月には会社の組織改編の一環として、営業部門であるクロスメディア局地域創生部内に、「Build New Local準備室」を新設。5月16日付人事で、専任1名・兼務5名の計6名が、同準備室の一員として配属されました。人員構成は部長・課長級が4名、中堅社員が1名、新卒社員が1名で、部署は経営企画室、クロスメディア局、東京支社から選出された部局横断型の組織となっています。
 各世代の多様な考え方や意見を事業に反映することで、既存のビジネスモデルとは切り離した形での自由な発想で、事業のブラッシュアップを進めています。そして、新規部署を立ち上げたことで、「Build New Local」「じぶんデザインプロジェクト」といった言葉が社内の共通言語となり、部局を越えた社員間同士での相互理解や情報交換にもつながっています。

テストマーケティング始動

 「夏休み期間(7月下旬~8月下旬)」をひとつの山場として、今年5月中旬からテストマーケティング実施を計画しました。「そもそも本事業に一定のニーズはあるのか」という全体的な枠組みから、「どのような家庭環境の子どもたちが参加するのか」「保護者はどのような考えを持っているのか」「広報媒体は何を活用したら、よりダイレクトに伝わるか」など、様々な消費者ニーズの調査を目的に、複数の体験プログラム運営を目標としました。
 プログラムの開発にあたっては、体験をその日限りで終わらせず、「ストーリー」として体感してもらい、未来の自分や社会へイメージをつなげることを意識。体験回数は「ストーリー」の場合は全4回とし、実施日は「休日(土日)に週1回×4週」「平日+休日のセット×2週」とパターンを分けて、いずれも現地での体験型学習としました。あわせてオンラインの単発体験も準備して、事業のあらゆる可能性を試しました。
 7月1日に「じぶんデザイン」プロジェクトのホームページの運用を開始して、体験概要や応募フォームを設置。今回はあえて新聞広告を使わず、埼玉新聞の公式LINEアカウントなどSNS/WEB広告を中心に、ターゲット層を明確にした形での広告運用で参加者を募集しました。
 体験プログラムは「県産品×パンで地域おこしストーリー」、「埼玉大学でロボットを動かす!ストーリー」、「SDGsマインクラフトを体験企画」の3本を用意。
 「県産品×パンで地域おこしストーリー」は、パン屋さん開店までの過程で、商品開発からお金の流れを学び、最終日には地域のマルシェイベントで販売会を開く構成としました。
 「埼玉大学でロボットを動かす!ストーリー」は、社会で活躍するロボットを知り、実際に組み立ててプログラミングで動かすという内容。「SDGsマインクラフトを体験企画」は、人気ゲーム「マインクラフト」を使い、持続可能な開発目標(SDGs)を考えるオンライン授業として、それぞれ実施しました。
 次回の記事では、テストマーケティングを通じた検証結果、そして事業実装化に向けた課題や今後の取組計画などをお伝えさせていただきます。

文責:埼玉新聞社クロスメディア局地域創生部Build New Local準備室